ある晴れた朝。ラジオ体操をする大勢の作業員たちが向かったのは、広大な遺跡発掘現場。そこで発掘されたものは「落し物」として警察に届けられるらしい。そんな古代人の落し物を探し続ける女性たちがいた。
長野県の山中。星糞峠の遺跡発掘現場で調査員として働く大竹幸恵さんは、そこに30年間通い続けてきた。大昔、同じ場所で縄文人たちは天然ガラスの黒曜石を掘っていて、その遺跡が出てくるのだ。小学6年生の時に土器を拾って以来、大竹さんは考古学一筋の人生。今では10名の作業員を率いて、毎日、泥まみれになって遺跡を掘る。でも、今年いっぱいで発掘は終わり、定年を迎えることになっていた。
一方、岩手県の洋野町にある北玉川遺跡は発掘が始まったばかり。調査員の八木勝枝さんが作業員を指揮している。ここは作業員の女子率が高く笑いが絶えない。八木さんは土偶が大好きな土偶女子で、これまで発掘してきた数々の土偶を愛おしいそうに紹介する。かつて文化財レスキューをしていた八木さんは、東日本大震災の被災地で思い出の品を必死で探し続ける人たちの姿を見て、遺跡はその土地の思い出の品であり、地元の人たちが生きていくために欠かせないものだと言う。
神奈川県の稲荷木遺跡は、調査員8名、作業員200名という巨大な現場。次々と土器や土偶が出てくる。そこで作業員として働く池田由美子さんは、現在、珍しい釣手土器を発掘中だ。池田さんは20年以上のベテランで、ポストに入っていた求人チラシで応募。働いてすぐに珍しい土器を発見して発掘作業にはまった。発掘は考古学に縁がなかった女性たちの人生を変えることもある。のちに国宝になった合掌土偶を発掘した作業員、山内良子さんと林崎恵子さんは、その時の思い出を熱く語る。
栃木県の中根八幡遺跡では大学生たちが発掘を行なっていた。その中の一人が國學院大学の大学院生の伊沢加奈子さん。中高生の頃は両親が手を焼くほど反抗的だったが、そこで出会った考古学が彼女を変えた。考古学に夢中になって大学生活を送った伊沢さんは大学を卒業。地元の歴史民族資料館に就職して社会人としての一歩を踏み出す。働くようになって文化財を守る必要性を考えるようになった、と伊沢さんは言う。
その頃、星糞峠の発掘が終了して現場は埋められ、そこに建立されたミュージアムに発掘現場から削り取った地層が展示された。北玉川遺跡も稲荷木遺跡も埋められて、新しい道路が作られる。考古学は掘っては埋めての繰り返し。そして新しい現場で、今日も汗水流している「掘る女」の姿があった。
ある程度の「あたり」をつけ見えない事は頭の中で探り、その確証を得るために掘るものだ。
なんだか大人の恋にも似てるなって思う。
発掘している女性達の顔は昔から好きだった人の心を掴んだ時の歓びの笑顔のよう。
違うのはそのドレスが汗だくの作業服って事だけだ。